【摺友禅九寸名古屋帯】
―ガルーダ更紗―
制作/たち花
※きもの水流別誂え染
紬地適時季（3月～１１月）
春単衣～盛夏～秋単衣
※真冬を除く通年

異国情緒を想わせる印象の色調です。　描き染められた彩色も文様も異国の更紗を想わせます。　「和文化」を想わせる和更紗とは異なります。　でも、更紗も日本の友禅職人が手掛けますと不思議なことにそこに感じられるのは確実に丁寧極むる日本の友禅の美しさなのです。　ひとつの「意匠/design」として完璧に完成された美しさが、日本的な美しさを醸し出しています。 丁寧が尽くされた摺友禅は帯地としての価値観を高めています。　文化の異なる異国の文様でありながら、私たち日本人に訴えかける意匠/designとして、いささかも物足りなさを感じさせない高い「質感」を保っています。　それは意匠の巧みさと仕事の質感が見事に相俟っているからなのだと思います。　ガルーダとはご存知のように想像上の「神の鳥」です。　こうした異国の文様やデザインをそのまま描き写すことは現代の技術においてそれほど難しいことではありません。　単純な綺麗を求めるならば、PCでデザインを取り込み写真版で染める、それは綺麗な染物となるのだと思います。　しかし、染色工藝として深みのある美しさの表現が主であるとしたら…。

本品はカジュアルから少し余所行きを想わせる装いの際の名古屋帯として描き染められています。　外国の生産品ではありません。　異国の文様/色彩をそのまま模写/コピーしているものでもありません。　摺友禅の染色工藝として確実に昇華させているのです。　京都において意匠/デザインに携わる下絵師がその感性や英知を凝らし、染場に仕える職人が、その積み重ねた経験値と職人としての矜持を刷り込まることで初めてひとつの「工藝品」として完成します。　極めて「美意識」の高い下絵師、そして極めて技術の高い染場が繋がって初めて可能となる染色工藝です。　その意味で、こちらの染色作品は写真版で量産される更紗（※それらを更紗と定義するのかと言う論点は別にして）外国製の更紗とは確実に一線を画していることは言うまでもありません。　加えて申し上げるならば、摺友禅による細密な彩色の表現、腕利きと称される職人の仕事の迫力が染色の表面だけでなく、その質感のすべてに有無を言わさぬ力を持ち、見る人を魅了するのです。　ひと目で上質を想わせてくれる染織作品です。　

「※紬織物全般、江戸小紋、色無地、軽い附下などにお使いいただけます。」