【型絵九寸名古屋帯】
―カサブランカ―
薄機紬地
着用時季・春単衣～盛夏～秋単衣



こちらに掲載のカサブランカ、新たに彫り直した型を使い染められた品となります。　型絵染の作品の中でも格別の美しさを想わせてくれます。　ここで申し上げる美しさは染色技術の単純な美しさではありません。　染色技術の美しさを単純に比較するならば、本品以上に手の込んだものはいくらでもあります。　ここで申し上げる美しさとは意匠固有の美しさです。　designとしての美しさです。　たとえ織であれ染めであれ、品そのものが保つ空気感はこうした染色には必要不可欠。　そしてそれは型紙（下絵も含め）の模様の美しさが美意識として溶かしこまれたもの、と言えるのではないでしょうか。　つまり、染色の美と創作の美が交差する美しい融合。 　

こちらの帯を眺めていて感じるのは丁寧が積み重ねられた刷毛の動き、細やかに且つ大胆に、なぞるように染められたそれは一見手描き友禅のような印象を携えてはいますが、あくまでも「型絵染め」です。　琢磨の内に堆積された叡智、経験と勘どころに裏付けされた、躊躇の感じられない、ひといき毎の手業。　その手業の跡に浮き出てくる美しさ。　芸術的に彫り上げられた型紙を用いて、優秀な職人の手によって染められた、型絵染特有の芳醇な美しさは絵画的印象の強い手描き友禅と比してどこか版画のようで工芸的な印象を帯びて見る者の目に映ります。　生地はカサブランカを染めるために用意された薄機の紬地が使われています。　冬季にお使いいただけなくはないけれど、春単衣から盛夏、秋単衣までの３シーズンお使いいただけます。