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空
【夏大島紬/手織】
―百六十亀甲細工―
制作/東郷織物
墨黒地
精緻極むる亀甲細工で織り上げられた夏大島。 巾およそ一尺の間に百六十個もの亀甲が織られています。 もちろん細かさだけを競うものではありません、とは言え一つの目安となることは確かです。 刷毛目のような無地感覚や、十字絣や縞大島とは明らかに異なる印象、それは正統絣としての確かな印象なのかもしれません。 余りに精緻なため、遠目には無地に見えますが、やはり単なる無地とはちょっと印象が違うんですね。 細やかに織連なる生成りと墨の亀甲は微塵格子が少し離れると無地に見えてしまうのに対し、生地に奥行きを感じるからでしょうか、無地からは感じることのないある種の存在感を感じさせます。
東の結城、西の大島、言い古された言葉です、けれども言い古されたという事はつまり、言い換えれば現在でもそう言われているという事なのです。 中でも絹織物特有の光沢を湛えた大島紬は数多ある紬織物の中でも特別な雰囲気が感じられます。 美しく練られた上質な生糸だけで織り上げられた大島紬は真綿紬とは明らかに異なる雰囲気、他にはない垢抜けた印象を想わせてくれます。
今回掲載させて頂きましたこちらの品は東郷織物が手掛けたもの、精緻を極めた百六十亀甲の夏大島です。 東郷織物は綿薩摩の代名詞の如く着物愛好家に広く知られています。 かつて武者小路実篤氏が東郷織物の祖、永江明夫氏の綿薩摩に触れ、余りの上質な質感に「綿薩摩、手織絣、誠実無比」と言う言葉を送ったことはあまりにも有名です。 その言葉に集約されるように、糸のすべてにこだわり、絣を探求し、上質を極めた織物をつくり上げる、言わば永江明夫氏の偏執的なまでの情熱が「夏大島精緻亀甲絣」を創出したのだと思います。
とりわけ墨色の亀甲絣はそうした印象を感じさせるように思います。 今回ご紹介させて頂きます東郷織物の夏大島もまた、永江氏のその情熱が脈々と受け継がれています。 織機で生産される夏大島とは確実に一線を画した永江氏の想いを受け継ぐ夏大島、伝統だけに捉われることのない夏大島をつくり出しているのです。 光が透き、風が通るその織物はちょっと他では見ることの叶わない、比類なき美しさ、地色もなんと表現すれば良いでしょうか。 墨色でもない、もちろん黒でもない、単純な色名で表現出来ない美しさはシックな印象と共に涼感を強く想わせます。
想うだけで気の遠くなるような、途方もない工程を経てつくり上げられる百六十亀甲絣と言う夏大島。 整然と並ぶその美しさは機械織に見る方眼紙のような無機質とは異なります。これ以上ない精緻な亀甲は左右の巾の中に百六十余りの亀甲絣が整然と並ぶ訳ですが、人の手が介在するその精緻はどこか曖昧に揺らぎ、工藝的な美しさと共に織り手の誠実無比が伝わりくるようです。単衣の終わりから初秋まで楽しむことの出来る織感はとても魅力的ではないでしょうか。 どうぞご検討下さいませ。 ※コーデ画像の帯につきましてはお訊ねください。
商品番号 |
ITK-OOE-0015163 |
商品名 |
夏大島紬/百六十亀甲細工 墨黒 |
品質 |
絹100% |
価格 |
¥595,000(表地のみ仕立て無し/税込) ¥640,000(単衣仕立/居敷当付き/税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約3週間~25日戴いております。 【※単衣仕立てをご希望の際はお尋ねください。】 |
巾/ 長さ |
1尺(※38cm程)・長さ/3丈4尺程(※13m程) |
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