【宮古上布】
制作/仲宗根みちこ
染料/宮古島に自生する植物
経糸/手積み苧麻糸
緯糸/手積み苧麻糸
―経緯総詰め絣―



国定重要無形文化財指定 宮古上布、極上の着心地と称される麻織物。　世界一細いと言われる手積みの苧麻を使い織り上げた織物。。。　原材料となる手積みの苧麻そのものもこの小さな島で栽培され、おばあと慕われる「ひと」の手によって「糸」が積まれ、その土地に自生する植物染料にて染色が施されるのです。　そう、重要無形文化財指定の宮古上布のすべてがこの宮古島で賄われるのです。　ご存知のように染織の宝庫とも呼ばれる沖縄には様々な織物が在ります。　そのどれもが極めて個性的で素敵な表情を携えています。　しかしその保つ表情は決して個性を誇るためのものではなく、その島の風土に根ざした自然なものであるのです。　また染織技法にそれぞれ異なりを見せますが染料そのものはとてもよく似たものが使われます。　それは沖縄であればどこにでも自然に自生している植物だからなのかもしれません。 　

【仲宗根みちこ】
1959年/沖縄県石垣島に生まれる
1979年から沖縄県伝統工芸指導所で絣や組織織りを学ぶ
1983年/両親の出身地である宮古島に移住し工房を構える
（※宮古島で意匠/デザインから染め、織まで一貫して制作）


宮古上布は仲宗根さんの人生そのものだと聞きます。　日々織りと向き合う仲宗根さんの創る宮古上布は古典的な宮古上布のデザインを現代的なテイストで再構築した、仲宗根さん固有の宮古上布と言えるのかもしれません。　それゆえでしょうか、仲宗根さんの作品には宮古上布とともに生きる覚悟や慈しみが溢れているように感じます。　こちらの作品を見た時、以前、と或る写真家が写した一枚の宮古上布の写真を思い出しました。　キャプションには「この麻布の美しさのすべてを写し取ることが出来たであろうか、・・・苧麻糸一本一本が宮古上布そのものなのだ、仲宗根さんの織り出す麻布…。」とあったように記憶してます。　　


染織工藝とは不条理な世界に差し込む一筋の光。　たとえ世界が荒もうとも厳然としてそこに在る、そんなことを想いました。　１３ｍを織り上げた先でようやく天を仰ぐ仲宗根みちこさん、どんな感情が去来したのか想像すら出来ません。　気持ちを切り替えるようにうなずき、初めてそこで自らの胸を打つような光が差し込んだのではないでしょうか。　　美しい、という記憶は塵のようにいつも浮遊していて意図せず創作の中で姿を現すのだと思います。 職人仕事に近い宮古上布にアートを織り込んだ染織作家、仲宗根みちこ、伝統的な織物である宮古上布に新しい試みを取り入れ、現代的なデザインと琉球古典染色が織り交ざる透明感を想わせる作品世界を広げられています。　制作された作品は垢抜けたデザイン性を想わせながらも宮古上布特有の作品性を感じさせてくれます。　整然と並ぶ経緯絣と蚊絣が見事という他に形容し難い秀逸な作品です。