燕来る
企画会議は
女のみ
北嶋ひさ子
帆船
【手描き友禅九寸名古屋帯】
―柳に燕― 蝋吹雪染め 制作/大村幸太郎・日本工芸会準会員
紗紬地
着用時季・夏/単衣
表面だけを見ても、まずその意匠そのものに力量(手業の凄み)を思わせる、、、風景の一片を捉えただけなのに、、。 御所解きでもなく、江戸解きでもない、身も蓋もない言い方をしてしまえばとりたててどうと言うことの無い風景画なのですが、心惹かれるのです。 さっきからこのお品を眺めながら、何を想っていたかと言うとですね、制作に置ける一見微妙な(実際はうんと違うのだけれど)仕事の質の違いをちゃんと感じさせることも感性やセンスの一部であり、それを絹布の上にわかるように具象化させるのもまた職人「腕」の成せる業なのだなぁ…。と。 本来仕事と言うものは手を抜けるところは手を抜きたいのは至極当然なのだけれど、手を抜けるところにも惜しみない仕事を掛けるからこそ、実際の作品となったときの出来栄えが大きく違ってしまう、それは厳然たる事実でもあるのです。 手描き友禅にしても型友禅にしても、本音でお話をしてしまえば、きちんとしたもの?(審美的に優れていて一枚の画として成立しているもの)はそれほど多くはありません。 美しいものとそうでないものが判別出来る大人の女性が使える帯、平たく言ってしまえば美意識を持つ大人の女性が目に留めるお品ってそんなにたくさんあるものではないのです。
安直に意匠/designが起こされ、(そうしたものを意匠/と呼ぶのも抵抗がありますが。)PCに落とされ、インクジェットで印刷される。 そのすべてを否定するつもりも有りません。 ただ、私がそうしたもの<の多分すべて>を好まない、と言うだけの事です。 なんでもかんでも上辺だけを真似て何かを作る。 これはオリジナルを創作した者に対し失礼であるし、余りにも意識が低い。 卑しくも「美」に関する仕事に携わるのであれば尚更のこと。 いまの着物業界にそんな意識が必要なのか、実際私にはよく判らないけれど、少なくとも私がそうした志のない真似物に関わることはないと思う。 本物と真似物なんて仕分けが有るとするなら、真似物はそれを作る者も、そして身に付ける者の心までも貧しくしてしまう。 特にこうした趣味趣向の世界で真似物って…あまりにも寂しい。。。
以前コラムでも書きましたが、剣の道に「剣は心なり、心正からざれば、剣又正しからず、剣を学ばんとすれば先ず心より学ぶべし」という言葉があります。 染織においてもやはり大切なのは心。 心が正しければ染織は美しく、染織を学ぶのなら、まず、心(美意識と言い換えても良いと思ふ。)より始めるべき。 美意識と言う染織に携わる者にとって一番大切な意識を理解出来ない人たち。 上辺だけをなぞる染織(それらを染織と呼ぶか否かは別にして。)これを染織の堕落と言わずして、何を堕落と言うのだろうか。 創意の籠められていない染織は見る者が見れば即座に分かる。 現役で仕事をするのも後十年、そんなものに触れたくもないのです。(言うことが生意気千万ですね、相変わらず、笑)
そんなことが想いながらこの帯をつくづく眺めてみる。 その仕事の質の高さにアタマが自然に下がる。 舌を巻く、なんてとこまではいかないけれど、少なくとも美意識、見識の高さには目を見張るものがある。 それは品を見ればすぐに判るし、第一品がそれを雄弁に物語っている。 たとえそれが着物や帯という染織美術の断片にしか過ぎないとしても、曇りがちな目を心地よい仕事の痕跡が包み込んでくれる。 たかが着物、かも知れません。 でも、どこか、誰か、もわからないけれど、この帯を手にされる一人の人生において意味がある、とまで思えるような染織…。(ちと大袈裟か…笑) 泥中の蓮、なんて言葉が有るけれど、まさにそんな言葉までも思い出す、美意識の籠められた染織です。 少なくとも私の評価はそうです。
商品番号 |
MHK-SJE-455 |
商品名 |
手描き友禅九寸名古屋帯/柳に燕 蝋吹雪染め |
品質 |
絹100% |
価格 |
¥217,800(帯地のみ仕立て無し/税込) ¥229,300 (芯仕立て上げ税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。 |
巾/ 長さ |
お仕立て上がりの際のサイズは帯巾・八寸二分程。/ 長さは九尺八寸程。多少の変更は出来ますのでお尋ねくださいませ。 |
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