【科布/八寸名古屋帯】
―科（シナ）布―
経糸/科１００％
緯糸/科１００％
手績み科糸
着用時季・単衣～夏
比較的目の詰まった織物ですので真冬を除く通年お使い頂けます。


シナ布：科布」榀布」しな布」級布」など様々な文字で表現されるようにその語源も諸説あり、定かでないことも多くあります。　一説にシナはアイヌ語で結ぶ、縛るなどを意味する言葉でそれがシナ布の語源であるという論もあります。　学術的な事を書き出しますとキリのない事になってしまいますのでその辺りは学者にお任せするとして…。（※それゆえ呉服業界ではシナ布、とカタカナ表記が望ましい、とされておりますのでこちらでシナ布とさせて頂きます。） 　

シナ布は山間部に生育するシナノキの樹皮から靱皮を剥ぎ、繊維を糸にして布状に織り上げたもので、（※あっさりと記しておりますがその工程は十数工程にも及び制作にはおよそ一年を要します。）ざっくりとした質感、素朴な風合いが印象的です。　シナ布は古くは古代布として全国で生産されていたと記されてますが、量産に適う木綿を始め、化学繊維の普及によりほとんどの産地から姿を消してしまいました。　こうした事情は静岡県の葛布などと同じですね。


樹皮の繊維の感触は涼感を想わせます。数多ある自然布の中において葛布や藤布など同じように素材の質感をそのままに感じて頂けます。　科糸は繊維そのものに張りがあり、しなやかなではありますが、表面的な固さもあります。　お召しになられる前々日辺りに霧吹きをしておきますと翌々日には柔らかくしなやかな締め心地が得られます。


こうした無地感覚の自然布の帯は、合わせて頂ける範囲が広い、と言うことが挙げられるかと思います。　小千谷縮・明石縮・壁上布や上布などカジュアルな夏のお召し物にお使い頂けます。　画像では長板中形に適わせてみました。絽や紗、絽縮緬の着物などにもお使い頂けますが、その際には擦れによるダメージがないよう少し気を置いて頂けますようお願い致します。