南都絵師
住みにし小路
梅蕾む
河合佳代子
栴檀
【江戸友禅九寸名古屋帯】
―梅に松― 横挽き玉糸紬地
制作/久呂田明功
盛夏を除く通年
こちらに掲載いたしました江戸友禅九寸名古屋帯、久呂田明巧氏の手描きによる作品です。 いかにも江戸友禅然とした意匠、構図、彩色です。 江戸友禅以外の何ものでもない、それほど古典的な友禅が施されています。 彩色も江戸友禅特有でなんとも魅力的な発色です。 もっと言えば江戸友禅でないと出せない、そう言ってしまっても決して言いすぎではない美しさです。 友禅を見慣れない人には京友禅との区別がわからないかもしれません。 そもそも友禅そのものがよくわからない、のかもしれません。 友禅そのものについて書き始めますと取り留めのないものになりますので友禅そのものについては検索して頂くこととして…。
描かれたのは、わざわざ申し上げるまでもなく「梅」に「松」 梅にまつわるお話には事欠かない日本。 百花の先駆けとして咲くことから、初春の花と思われるかもしれませんが、留袖は訪問着、振袖など友禅には欠かせない模様として認識されており、とりわけて季節に拘り過ぎる必要はないと思います。
ちょっと余談ですが、
月夜には
それとも見えず
梅の花
香をたづねてぞ
知るべかりける
万葉集には梅を詠んだ歌が多いですね。 事程左様に私たち日本人は梅を愛でて来たのだとあらためて思います。 古今和歌集にも梅の歌がたくさんあります。 菅原道真が梅を愛した事はよく知られるところです。
こち吹かば
にほひおこせよ
梅の花
あるじなしとて
春をわするな
(拾遺和歌集 雑春 贈太政大臣)
東風が吹くころには風にのせて梅の花の匂い(香り)を届けてくれよ梅の花
主人(私)が去ったからとて春を忘れるでないぞ
菅原道真が庭の梅に別れを告げた歌ですが、実は梅は空を飛んで道真を追って大宰府までいったというのは有名なお話。
松はと言えば「我がやどの、君松の木に、降る雪の、行きには行かじ、待にし待たむ」 作者不詳として、万葉集第六巻に詠まれています。 また、日本では古来より、神の宿る木として松に神性を見てきました。 常盤木(ときわぎ)としても真っ先に思い浮かぶのも「松」かも知れません。冒頭の歌は “私の家の、君(貴方)を待つ松の木に降る雪、その雪のように行き(雪)はしない、君(貴方)待つ(松)ことにしましょう、” というように「待つ」を「松」に、「行く」を「雪」になぞらえ詠まれた歌で天平16年1月5日に安倍虫麻呂邸で催された宴席で即興で詠まれた歌とされています。 単なる言葉遊びと言ってしまえばそれまででしかありませんが、万葉集で八十首も詠まれていることを想うと松は私たち日本人の心象風景にいつも在り続けている樹木なんだと思います。 そも、松の木の「松」の名の由来は ”神さまが降りてこられるのを待つ“ 意の松であり、いつの世も万葉びとは何かを願うとき、松に祈ったのだと思います。新年に向け、特別な願いを込めるのも良いかも知れません。 梅の着物に松の帯、や、雪を想わせる白大島・白結城に松の帯、など素敵ではないでしょうか。
なんともクラシカルな趣を想わせる作品です。 眺めていればいるほど、描かれた文様の由来や出典が、さほど大きな意味があるようには思えなくなってしまう程美しい。 美しさとは本来そうしたものだと思います。 方途を尽くし、難しい言葉を並べたところに美しさが在る訳ではなく、本質に美しさをもたないものは、やはり美しいとは感じられないのです。 解説や言葉など添えられていなくても、美しさを秘めた作品は唯そこに在るだけで美しいのです。
※こちらの帯は、色無地や江戸小紋、軽い附下などに合わせて頂きますととても素敵なのですが、無地感覚の結城や大島などのカジュアルなお着物に適わせて頂きましてもよろしいかと思います。 小物を変えるだけ、、感性でお使い頂ければ、と思います。
商品番号 |
SJE-KRK-9 |
商品名 |
江戸友禅九寸名古屋帯/横挽き玉糸紬地/梅に松・久呂田明功 |
品質 |
絹100% |
価格 |
¥283,000(帯地のみ仕立て無し/税込) ¥294,500 (芯仕立て上げ税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。 |
巾/ 長さ |
八寸~八寸一分程/ 九尺八寸程※お仕立て上がりの際のサイズ |
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