樹相よき
松の緑の
国分寺
尾崎みつ子
雨月
【西陣織袋帯】
―松雲文― 熨斗目段
制作/洛風林
ご存知の方もいらっしゃるかも知れません。「我がやどの、君松の木に、降る雪の、行きには行かじ、待にし待たむ」 と、万葉集第六巻に詠まれています。(※作者不詳) 古来より日本では、神の宿る木として松に神性を見てきました。 常盤木(ときわぎ)としても真っ先に思い浮かぶのも「松」かも知れません。 冒頭の歌は “私の家の、君(貴方)を待つ松の木に降る雪、その雪のように行き(雪)はしない、君(貴方)待つ(松)ことにしましょう、” というように「待つ」を「松」に、「行く」を「雪」になぞらえ詠まれた歌で天平16年1月5日に安倍虫麻呂邸で催された宴席で即興で詠まれた歌とされています。 単なる言葉遊びと言ってしまえばそれまででしかありませんが、万葉集で八十首も詠まれていることを想うと松は私たち日本人の心象風景にいつの世も在り続けている樹木なんだと思います。 そも、松の木の「松」の名の由来は ”神さまが降りてこられるのを待つ“ 意の松であり、いつの世も万葉びとは何かを願うとき、松に祈ったのだと思います。 新年に向け、特別な願いを込めるのも良いかも知れません。 梅柄の着物に松の帯、や、雪を想わせる白大島・白結城に松の帯、など素敵ではないでしょうか。
こちらの作品は能装束を図案の範として熨斗目段替の文様を写したものとなります。 ご覧いただけますように眺めていて古(いにしえ)を感じさせないのは往時の様をそのままに再現するのではなく、制作者の現代的な美意識、近代的な感性/センスが新たに籠められているからなのかも知れません。 熨斗目文様や能装束そのものはすでに完成された意匠/designでその部分だけを見ればとりわけ際立つ秀逸性は見られないのですが、やはり彩色然り、配し方然り、それらのすべてが実に巧みでそれが工藝作品としての美しさを醸し出しているのだと思います。 西洋、東洋に限ることなく世界の「美」に関する資料を蒐集され、自社の織物に映しこむ美意識、センス、技法は見事なもの、洛風林ならではと言わざるを得ないのです。 真に美しい織物です。
こちらの帯は礼装や略礼装の装いにおいて、あるいはハイカジュアルなお席において装いを愉しむ方の趣味の優さを想わせ、豊かさをもたらしてくれます。 工藝的な染織は西陣織の無限なる叡智を想わせてもくれます。 洛風林の芸術に対する想いや創造は止まるところを知らないかのようでもあります。 織物にしても、染物にしても、創り上げられた作品に批評を加えるのはいとも容易いことです。 しかし、工芸や創作にほんの少しでも触れた経験が有れば容易に解かることですが、「無」から「有」を生む物理としての作業だけが創作ではないのです。 そこに至るまでには実際の創作以上に永い時間が掛けられているのです。 最後にあとひとつだけ付け加えさせて頂くならば…。 この織物の最大の魅力の一つは魅力的な色彩に加え、曖昧な表現を承知で申し上げれば間違いなく、この西陣織の織り感/質感であろうかと思います。 いわゆる量産される西陣織では見ることのない織味なのです。
※本場結城紬/高機、象げ色の無地織に合わせてみました。礼装コーデではございませんが、矢やカジュアルに寄せた着こなしも素敵だと思います。 訪問着や附下、色無地などの礼装/略礼装にお使いいただけますのはもちろん、小紋や江戸小紋にもお使いいただけます。
商品番号 |
TNM-OOE-090 |
商品名 |
西陣織袋帯/松雲文 熨斗目段 洛風林 |
品質 |
絹100%※金銀糸箔を除く |
価格 |
¥550,000(帯地のみ仕立て無し/税込) ¥561,500 (芯仕立上/税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約2週間~20日戴いております。 |
巾/ 長さ |
八寸程/ 一丈二尺弱(約4m40~cm程)・※お仕立て上がりの際のサイズ |
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