さて、着物の専門店を営んでいて気を付けて頂きたいと思うことがあります。 それは、着物を染めるときに用いた染料の違いです。染物/友禅などで言えば、京友禅や加賀友禅・名古屋友禅などに一般的に用いられる化学染料とはまったく成分の異なる顔料を使用している染物です。 日本画の絵具としても使われる「顔料」は特に本紅型や型絵染など、国画会会員や工芸会会員の作品に使われることが多いのですが、決して着物を染める染料として適しているかと言えば必ずしもそうとは言えません。 色移り/色落ちや変色/退色することもあります。 しかし、顔料を用いて染色が施された着物には、他では得られぬ独特の雰囲気があり、色落ち/色移りや変色/退色のリスク/マイナス面を補って余りある魅力があることは否めません。 正藍染に代表される草木染の着物も変色/退色/色落ちのリスクは常に付いてまわります。これも天然染料である「正藍」「草木染料」の着物から感じる植物染料固有の魅力です。化学染料で染められた着物からは決して得ることの出来ない魅力と背中合わせの宿命です。中でも、「正藍」の着物は時に帯や長襦袢を染めてしまう?(色移りする) こともあります。ですので、「正藍」の着物をお召しになる際は、お仕立の前に必ず、「色止め加工」をされることをお奨めします。ただ、それでも100%と”色落ちを防ぐ事が出来る”とは言えないのが「正藍」です。 なにやら、「正藍染め」を弁護するかのようなの発言ですが、それらを思っても着てみたい、抗しがたい魅力が正藍にはあるようです。管理方法は染料/染色技法により、異なりますが、基本的に、自分で何かをしないこと、が一番かと思います。無責任な言い方かも知れませんが…。ただ、正藍をどうしてもご自宅で洗いたいとおっしゃる方には 「お酢」を垂らした「酢水」で洗うことをお奨めします。また、ご自分の着物が「正藍」か否かを確かめる方法として、糸端が有ればそれを皿の上などで燃やしてみて下さい。正藍であれば燃えカスに藍の染料が溶け出し、皿が青く染まります…。つまり、その際、藍の染料が溶けださなかったり、色落ちのしないものは、藍染めのように見えて実は正藍ではないのです。 なにかと手間暇が掛かり面倒なように思われたかもしれません。確かに着物はジーンズやTシャツを扱うようにはいきません。でも、そうした着物まわりの手間暇をいとおしく思えるようになったなら、面倒にさえ思えた”装いの後先”それさえも着物の魅力として楽しめるようになる筈です。 弊店では、他店でご購入されました着物や帯のお手入れのご相談も承っております。 お困りごとがございましたらご遠慮なさらず一度お持ちください。 |