【型絵染九寸名古屋帯】
紬地
制作/岡田その子
―パレット―

一面にパレットが描かれています。　どこか幼き子の画のようにも見えます。　緊張感のない（笑）二つの丸いパレットに色とりどりの絵の具が溶かれています。　筆はありません。　表現された構図はどこかユーモラスでもあり、見方を変えるとカラフルなボタンのようにも見えてきます。　配色ゆえでしょうか、どこか温かみも感じます。　こうした帯に関心をお持ちになる方はカジュアルな装いの紬や木綿好きの方が多いのかもしれません。　ご多分に漏れず私もそう、眺めているとつい微笑んでしまいます。　

何の制約も受けず、気持ちの向くままに創作されたことがその意匠-designから伝わってきます。　　“そんな変わった意匠-designは売れない”、と言った声などまったくもって意に介さない、制作者が創りたいものをつくる。　制作者自身が使いたいもの-欲しくなるものを創ったのでしょう。　少なくとも私は個人的にも着物専門店の店主としても好感を持ちます。　

制作という行為は言わば「無」から「有」を生み出す創造です。　制作者の想像-Imaginationの中にしか存在しなかった形を持たないイメージが、ある日デッサンとなり意匠となり型紙におこされて染色品となる。　文字にしてしまえば僅かこれだけの間に退屈な経験が入り込み、窮屈な思考が邪魔をし、その結果、凡とした「いつもの」-「よくある」ものとなって出来上がる、そうした極めてナンセンスな工程？の多い染色品の中でこうした何の制約を受けない、言わばプロトタイプとでも言うような作品が染め上がることは「ねばならない」にがんじがらめにされた制作者たちの目を覚ますことに繋がるのかもしれません。　

※趣の感じられる紬織物、上質な綿織物、無地感覚の御召織物など等に御使い頂けるかと思います。参考にペンシルストライプの丹後木綿と合わせてみました。