初月や
心のつかへ
失せて居り
小國佐世子
遠嶺
【本場結城紬】 地機(※居座機・いざり機)
市松暈し百細工十字絣
こちら、極上の着心地と賞される「いざり機」によって織り上げられた「本場結城紬/地機/ 市松暈し百細工十字絣」。 本場結城紬が、とりわけ地機による結城紬が、極上の着心地を想わせてくれるのか。 そもそも地機結城紬が地機結城紬たる所以とは。 本場結城紬の魅力について想うとき、何よりもまず、織物として他に類を見ることのない質感を挙げることが出来る。 地機としての基準を満たすべく手間暇の掛けられた”本場結城紬/地機”のすべての工程は、それを求める人の期待を決して裏切ることはない。 いざり機により織られる結城紬/地機の極上の着心地、羽衣とも賞されるそれは些かも過ぎた評価ではないのです。
とりわけ地機の結城紬はひとの手によって真綿から引き出される極上且つ極細の手引き真綿糸が使われる。 一般論的なお話として申し上げると、糸というものは撚糸(※撚り/より)を掛けることにより強度を保ち、且つ織物の糸となりえます。 けれども本場結城紬の糸はその他の産地の織物にはほとんど例を見ない、もっと言えば世界の織物に於いても例を見ない「無撚糸」(※撚りをかけない)の糸が使われるのです。
その素朴な無撚糸の真綿糸はそのままでは「機にかけて織る」ことは出来ません。 真綿糸は経糸緯糸、共に互いがすべらないため、経糸と緯糸を交差させにくいのです。 要するに「綜絖が開き難い、杼を通し難い」。 そのため真綿糸に糊を付けて滑り易くすることでやっと機にかけられ「織る」と言う作業が可能となるのです。 織り上げられて製品となった本場結城紬は、お求めになられた後、産地において入念な湯通しが施されます。 糸に付いていた糊が落とされたときに真綿糸は初めて呼吸をするかのごとく、空気を含みます。 空気を含み素朴な質感を甦らせた真綿糸は、他のどの織物よりも軽く、また歳月の経過とともに強さをも保つのです。 そしてそれこそが、「羽衣」とも称される極上の着心地を与えてくれるのです。
まるで蚕の恵である繭が「ひと」の「手」によって真綿糸とされ、またその「ひと」の「手」によって紬織物と言う形でやわらかな繭に戻るかのようなのです。 だからでしょうか、その表情は自然の趣に溢れ、また素朴でありながらも単なる紬織物とは異なる印象を見せてくれるのです。 でも、実はそれそこが本場結城紬の個性であり、まさに本場結城紬ならではと言える所以なのです。 私の狭い見識において繭から引き出された糸が織り上げられてまた繭に戻るような印象を保った紬織物を他に知りません。(※飯田紬に一部そのような印象の織物が在ります。)
画像でもお分かり頂けますように美しく細かな細工です。 加えてこちら、淡く目立たない市松模様が絣織されています。 つまり、市松絣の中にもう一つ細かな十字絣が織られているという凝りに凝った結城紬なのです。 真綿糸でつくられる絣としてこれ以上精緻な細工がない訳ではありません。 でも市松を絣織することに加え、細かな十字絣をここまで綺麗に揃えるのは腕だけではなく、極めて高い集中力を維持しなければならないのです。 文字にする以上にそれはなかなか容易なことではないのです。 絣の印を付ける際に0,5ミリずれてもこうした精緻な絣は出来ない。 その一点だけを取り上げてもこちらは極めて美しい。 それにしても…、。 僅かなずれも許されない、コンマmm単位の正確さで絣の個所を測りながら絣をつくるだけでも相当な日数を要したのは容易に想像出来ます。 そしてそれを機に掛けこの精緻な絣を織り上げてゆくのは気の遠くなるような仕事であったろう、と畏敬の念を禁じ得ないのです。 この結城紬の最高にして最大の魅力はこの精緻極むる意匠ではないかと思います。
こちらの織元は、始めから終わりまで「糸質」に拘り、「居座機」に拘りました。 それは本場結城紬の織元としての誇りであるのかもしれません。 お袖を通したその瞬間、いままでのものとはまるで違う初めての着心地に頷かされてしまう、そんな結城紬です。 ※参考までに比嘉英子さんの市松吉野九寸名古屋帯、誉田屋源兵衛の印度立木文九寸名古屋帯を合わせてみました。
商品番号 |
TS-OR-1 |
商品名 |
本場結城紬/地機(いざり機)・市松暈し百細工十字絣 |
品質 |
絹100% |
価格 |
¥1,350,000(表地のみ仕立て無し/税込) ¥1,392,000(単衣仕立/居敷当付き/税込)¥1,404,000(袷仕立上げ/胴裏・八掛/税込) ※一級和裁士による手縫い。 ※お仕立てに要する日数はご注文確定後 約3週間~25日戴いております。 【※単衣仕立てをご希望の際はお尋ねください。】 |
巾/ 長さ |
耳内一尺七分※約40.5cm程/ 12,5m程 (多少の誤差はご容赦下さい。) |
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