【有松絞】
大島紬地
やたら三浦絞り　


そもそも絞り染めとは、布を「括る」「縫う」「締める」などの加工をすることで模様を染め上げるもの、いわゆる纐纈。 一般的に知られる有松絞りは「木綿素材」が用いられますが、本品は大島紬地に三浦絞りが絞られています。これも有松鳴海絞りです。　こうした絞り染めは、そのほとんどすべてが「ひと」の「手」つまり指先で括られます。　ですから同じ柄でもすべてその「ひと」の指先の感覚によって模様が微妙に変化する…　さらに言えば、同じ「ひと」が同じような絞りを試みても同じものは出来ない。
もちろん一定の計算の上、括り、染めるのですが、括りを解いてみると予期せぬところに染料が滲む…　でもそれも作品としての面白みでもある。　言わば「偶然の美」とでも言えるのでしょう。絞りは、、「二度と出会う事のない文様」と「偶然の滲み」がひとの心を魅了し惹きつけるのかもしれません。

こちらのやたら三浦絞り、有松絞りの職人に特別に依頼して誂えたものとなります。 藍にて表現されることの多い有松絞りですが、こちら、深紫色で染めました。　藍色とは印象が異なりますが、これはこれで日本的な風情が感じられ、とても素敵です。
こうした色彩感覚はあくまでも「好み」によるもので、優劣を付けるものではありません。　藍色で染められた有松絞りはとりわけ美しく個人的には藍色を好むのですが、大島紬地に絞り染められた本品は単衣着物、あるいは袷着物としてもお召しいただくことを想うとこちらの深紫色は極めて魅力的。どちらが良いか…　愉しみ方次第かも。